ひとつだけ願いが叶うなら、あなたの好きな人になりたい。
恋人なんてそんなことは言えない。
わたしとあなたでは釣り合わないし、愛も恋も賞味期限がある。捨てられたくないし捨てたくない。だから付き合わなくたっていい。
ただ、この視線に気づいてもらえたら。同じ目を向けてくれたら。わたしが眠れぬ夜を過ごすようにあなたも朝を迎えてくれたら。
そうしていつか思い出にしてくれたなら、きっとあなたの死出の旅にもついていける。
なんだか落ち着いていられなくなって無意味に部屋を歩き回った。本棚の本を確かめる。机の影、ベッドの下。コンセントの内側。
わたしがそうしているように、あなたもこちらを見てくれているんじゃないか。声を聞いてくれているのかな、なんて思って、何も見つけられずに肩を落とした。
……願い事は願うだけでは叶わない。勇気を出して前に進まなければ夢は夢のままで終わってしまう。
少しでも、進まなければ。
ぎゅっと拳を握って覚悟を決める。あなたに好きになってもらいたいから!
まずは顔と名前を知ってもらうところから始めよう。あなたの好みなら何だって知っている。好きな人になってみせる。待っていてね、大好きな人。
4/3/2023, 11:52:03 AM