お題「逆光」
私には妹がいる。成績優秀で、朗らかで、笑顔の似合う、誰からも愛される女の子。
天は二物を与えずとは聞くけれど、私に与えられるものは全て妹に誤配送されたのではないかと思うくらいに、彼女は多くを持つ人だった。
誰もが彼女を好きになる。
私と友達になってくれた人も、彼女を知った途端に私から離れていく。
私の周りのものは全て、彼女の周りに集まっていく。
「お姉ちゃん、わたしね、お姉ちゃんみたいにぬいぐるみ作ってみたの。お姉ちゃんには敵わないけど」
はにかみながら私にぬいぐるみを見せる彼女。
私が作ったものより整っていて可愛らしいそれは、私への誕生日プレゼントだった。
その日から私はぬいぐるみを作らなくなった。
「お姉ちゃん、今度の土曜日、ちえちゃんの誕生日パーティーやるんだって。私も誘ってくれるなんて、ちえちゃん優しいね」
嬉しそうに、私の友達の話をする彼女。
その子の誕生日パーティーをやるなんて聞いてないし、そもそもその子と最後に会話したのは妹を紹介したときだったはずだ。
その日から私はちえちゃんを友達だと思わなくなった。
「お姉ちゃん、わたしね、彼氏ができたの」
可愛らしい顔を赤く染めて報告する彼女。
その彼氏が数日前に「さきちゃんと付き合うために仲良くしてただけだから」と私を振ったことを、彼女は知らない。
優しくしてもらえて、この人は私を見てくれるんだと、舞い上がっていた私を彼が撃ち落としたことを、彼女は知らない。
光源に近いものほど、影にしか見えないものだ。
どんなに太陽が好きなひまわりでも、同じカメラのフィルターに収まれば真っ黒になってしまうように。
太陽からは愛情を注がれているとしても。
私も彼女を好きな人間のひとりだ。
光源の近くにある物体としか私を認識できない人たちの気持ちはよくわかる。
逆の立場ならきっと私も私を気に留めないだろう。
どんなに私がみんなを思っても、どんなに彼女からキラキラした瞳を向けられても、影は影でしかないのだ。
こんな人生、きっと、私が彼女の眼差しを振り切れるまではずっと続くのだろう。
逆光で真っ黒なひまわりであり続けるのだろう。
おわり。
1/24/2023, 12:06:50 PM