燈火

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【嵐が来ようとも】


来る者拒まず、去る者追わずと噂の先輩がいる。
でも交際中は相手に誠実らしく、悪い噂は聞かない。
フリーのときに告白すれば絶対に断られないんだって。
昨日、彼女と別れたという、私の想い人の話。

「チャンスじゃん」と友人に煽られ、思い切って告げた。
先輩の返事は想像通りで、わかっていたけど嬉しかった。
翌日から、今度は何日持つかと下世話な噂を耳にする。
それが早々に消えたのは、先輩の態度が理由だろう。

今までの彼女と違い、先輩は私を恋人らしく扱う。
廊下で会えば話をして、遠くても目が合えば手を振る。
昼休みは教室まで迎えに来てくれて、一緒に昼食をとる。
放課後は買い物をしたり、ゲームセンターで遊んだり。

特別扱いはされるけど、きっと私を好きなわけではない。
時々、私を通して誰かを見ているような、遠い目をする。
気になって聞いてみたら、気まずそうに教えてくれた。
忘れられない相手に似ているから、って。

親しかったけど、ついに想いを告げられなかった相手。
その人を忘れるためにいろんな人と付き合ってきた。
そうすれば、いつか別の人に好意を寄せられるはずだと。
すべて打ち明けて、「利用してごめんな」と謝られた。

代わりだと知っても、私は離れられなかった。
距離を感じるけど、先輩は私自身を見るようになった。
その人と比較しながら、違う人間だと確かめるように。
先輩が出した答えは、別れてもう一度付き合う、だった。

新たな交際一日目、校門の人だかりに嫌な予感がした。
その中心にいた他校生が、こちらに気づいて笑顔になる。
隣の先輩を見ると、立ち止まって目を見開いていた。
ねえ、待って。去っていかないよね、先輩。

7/30/2023, 9:28:09 AM