雨音

Open App

『静寂に包まれた部屋』  No.133


ふと目が醒めると、何やら白くぼやけた空間がそこにあった。目を擦る。ぼやけがとれないぞと思ったら、それもそのはず。サラのまわりは、霧に包まれたかのように白い壁で囲ってあった。
一般的な六畳ほどの部屋で、全てが真っ白だった。十字の仕切りが取り付けられた窓もあったが、外は真っ白で、風も吹いていないのに暑くも寒くも感じない気温だった。
中央には小さな机と、何やらメモ帳、鉛筆もあったが、全てが真っ白。小瓶に入った植物までもが白かった。

なにも匂いがしないし、明るいのか暗いのかも分からない。静寂に包まれたこの空間が、ただただここにあるだけだった。

あぁ、とサラは思った。
ホントは、わたしはこんな場所に来たかったのだ、と。

学生な私は、多分 疲れていた。
何もしたくなくて
歩きたくなくて

ただただ、静かな場所に一人になりたかった

これは夢なのだろうか…。
でも、都合の良い夢だ。存分に味わさせてもらおう。

壁と同化して気付かなかったが、ベッドがあった。
横になる。
とたん、ゆるやかに眠りについた。




目が覚めたら、いつもの部屋に帰っていた。
…なんだったんだろ。
でも、肩の重さが少し、軽くなっていた。

9/29/2023, 10:35:30 AM