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〜明日、もし晴れたら〜

『止まない雨はない』

学校の図書室でそう書かれた本を見つけ
思わず足を止め、訝しげな眼差しで本を睨む

雨と晴れはよく人に例えられるが
雨はしばしば印象の良くないものとして使われる

晴れが、明るい・人気者・人生の成功者なら
雨は、暗い・控えめな人・苦労人のように

僕は雨が好きだし、悪く使われることにも
憤りを感じる

「納得いかない」

思わず呟いてしまった

「本当、納得いかないよね。」

横から突然声がして視線を向けると
上級生らしき彼女が眼鏡のズレを直しながら
同じ様にタイトルを訝しげに見ていた

「どうして雨ってこうも
悪く言われちゃうんだろうね。
私は雨が降った時の静寂の中に聞こえる雨音が
すごく好きなんだよなぁ。」

彼女がふんわり笑みを浮かべて言う

それがなぜだか嬉しくて

「そうなんです、
雨音って癒し効果も絶対ありますよね。
そもそも雨が降らなければ植物も育たないし
飲み水もなくなる。
それに雨を人に例える時も
悪い意味で使われるけど
雨もその人の本質もどちらも
よく知らないのに悪く言うなって思うんですよね…」

ついつい自分の意見を
捲し立てるような早口で語ってしまった

恐る恐る彼女の表情を見ると
やはり呆気に取られている

恥ずかしくなり、その場から逃げようとした時

「すごい…同じこと考えてた人が居たんだ」

彼女は瞳を潤ませ、期待と喜びを含んだ表情で
自分を真っ直ぐ見ていた

その表情に目を奪われ動けなくなってしまう

心の中でポツポツと地面を打つ雨音がする

降り始めた雨は
顔を出したばかりの小さな芽に
恵みの雨として降り注ぐ

時に晴れの恵みを受け
またある日は雨の恵みを受け
ある時は晴れの試練を受け
またある日は雨の試練を受け

そうして強く丈夫に育んでいく

8/1/2023, 6:09:38 PM