刹那
──友達なん?私たち。
女友達から送られてきたひとつのメッセージ。
友達だよって返せなかった。そんな余裕無かった。
衝撃的だった。信じられなかった。
一緒に帰っていた時間はなんだったのか。
文化祭の帰りにアイスを食べに行ったのは?
あなたが母子家庭だと知っているのは俺だけだとあなたは言っていた。
虚言癖の口軽男なんて評価して「信用出来ない」とまで行っていたのにそんな話された時は驚いた。
あなたの彼氏の愚痴を聞いて、別れる相談をされて、手伝ったこともあった。
家族の愚痴も聞いた。父親にも母親にも姉にも妹にも会ったことは無いけど、どんな人なのかは把握していた。
病んだ時に慰めた。アポなしで急に電話がかかってきた時は驚いたけれど、電話に出てひたすら話を聞いて落ち着くまで待っていた。
周りに付き合っていないことを驚かれるくらいには仲が良かった。
仲がいいと思っていた。
友達とは何か聞いた時、「少人数で遊びに行った人」と言っていた。
遊びに行ったこともあったのに、それすら覚えていないなんて。
今まで一緒に帰っていたのはただのクラスメイト。
別れ話に付き合わせていたのもただのクラスメイト。
遊びに行ってもただのクラスメイト。
友達ってなんだっけ。仲の良さってなんだっけ。
遊びに行った記憶もただの思い込みなのか。あの人にとってカラオケは遊びに行った判定にならないのか。じゃぁあの人の遊びってなんだ。
俺はただの便利な人なのか。都合のいいだけの男としてしか見られてなかったのか。いや、そもそも俺は人だったのだろうか。
そんなことはもうどうでもいい。俺は人間のはずだった。今もそのはずだから。選ぶ権利くらいはあるから。あるはずだから。
LINEは消した。インスタもフォローを外してフォロワーからも消した。
位置情報アプリは残しておこう。もしかしたら役立つかもしれない。既に住所は把握しているけれど、念の為に取っておいて損は無いはずだ。
刹那に過ぎた高校生活の半分が崩れ落ち、見る影もない。
4/29/2024, 3:34:19 AM