のぞみ

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やるせない気持ち


「そんなんじゃ、うちの会社をお前に任せられないぞ!
こんぐらいのことすぐ覚えろ!」

お父様が怒って言う。

家の会社はだいぶ大きな会社で1人娘の私は小さい頃から継ぐことが決まっていた。
今の中学2年生になるまでにも継ぐための知識や、技能を教え込まれた。

「ごめんなさい。」

下を向いてそう言う。

私は要領が悪く、頭も良くないから失敗ばっかりだ。
だから毎日のようにお父様から怒鳴られて、勉強を自分なりに懸命にする。これが私の毎日だった。


苦しい。
本当は継ぎたくなんかないよ。お父様。
私には夢がある。





小説家


小説家になって人を笑顔にしたい。
心から面白いって思ってもらえるような本を、元気になるような本を書きたい。



けれど、夢を言うことすらできない。


親の会社に縛られていつもいつも勉強ばかり。
全然楽しくない。
継ぐことばかり口にするお父様に腹が立ってやるせない気持ちになる。

「はぁー。」

お父様がいなくなった部屋で1人ため息をつくとお母様が紅茶を淹れてくれた。


「大丈夫?」


お母様が心配して声をかけてくれるけど今の私にはその言葉に笑顔で答えられるほどの元気はなくて、首を横にふる。



「そうよね。
あのね、お母さん今まで言えなかったけど、お母さんはあなたにやりたいことがあるなら別に継がなくてもいいと思うわ。お父様がなんと言っても。
本当にやりたいことがあるのならお父様にきちんとお話ししてみてはどう?
私はあなたが会社を継ぐことに縛られることはないと思うわ。あなたはあなたらしくしたいことをしたらいい。あなたが好きなことをして笑ってくれたほうがお母さんは1番嬉しいわ。」


お母さん・・・・・・・・・・

ありがとう。



お母さんの言葉に後押しされて決意が固まる。


真剣にお父様に話してみよう。



私はいつだって、会社を継ぐのが嫌だとか苦しいだとか思ってきたけどそれはいつだって口に出してこなかった。
お父様に継ぎたくないことを伝えてこなかった。


小説家になるのが夢なんだって。
チャレンジしたいんだって。


だから第一を踏み出してみよう。


お父様に話す。



それが夢への一歩だ。



                       完

8/24/2023, 11:04:05 AM