名無しの夜

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 今年こそ流星群、見に行こうよ。

 晩秋にさしかかる頃、彼女はよくそう言っていた。


 いいね、と返事はするものの。

 実際に赴いたことは、未だかつてない。


 しし座流星群、ふたご座流星群。


 真冬の真夜中に見るそれらは、きっと美しいだろうけれど——


 寒さが身に沁みる時期でもあり。

 仕事は年末向けて忙殺される時期でもあり。


 体調を崩すわけにはいかんと、結局、出掛ける計画すら形になったことがない。


 後日、テレビのニュースで映像を眺めるうち。

 いつか本当に一緒に行けるのだろうか、と疑問に思うあたり——


 未来が見えなくなっているな、などとぼんやり感じる。


 彼女が。

 この時期、言葉だけでも誘ってくれていたな、と。

 そう、思い出す日が来るような気がして。

 窓越しの夜空を透かし見る。


 流れ星が、見えたなら。


 果たして、とっさに——何を願うのか。


 自問しながら、微かな星の狭間を眺め続けた。

4/26/2024, 6:17:37 AM