黒山 治郎

Open App

家を出る度に少し想像してしまう
記憶を落とし迷い子でありたいと
良くない考えだとは分かっている

だが、否定的な気持ちとは裏腹に
想像力は衰えを知らず豊かになり
風が肌を擽るとより鮮明さは増す

無いはずの香りすら鼻へ届け出し
景色は瞼の裏で形を変えていった

 春は日向喜び華やかに開く沈丁花

    夏は清楚を感じさせ甘く香る梔子

 秋は色も香りも人を留める金木犀

    冬は封蝋を想起する艶やかな蝋梅

美しい四季に、心は惑い揺蕩いて
世話焼きな風へ放る様に身を預け
軽い足取りも心持ちも赴くままに
誰にも報せず、終点すらも決めず
風来人としての旅路を歩み楽しむ

ここまで考えてから現実に戻った
夢がどれだけ彩り豊かだとしても
常を社会に生かされている身では
想像の域を出る事ですら難しいと
そんな現実に辟易と肩を落とした。

              ー 風に身をまかせ ー

5/14/2024, 2:37:28 PM