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 早朝から始めてはや数刻、綺麗になった部屋をマグカップを手に優雅に一望する。達成感からか一つため息が漏れる。
 
「まー大体こんな感じかな」

 旅に出ようと決意してから想像の数倍はこの荷物整理に時間を要した。
 家財は全て借り物である上に私には部屋を着飾る習慣もない。故にそう時間のかかるものだとは思っていなかったのだが、現実はこのミルクティーのように甘くはなかった。

「ん.......?何あれ?」

 勝利の愉悦に浸っていると、部屋の片隅で何かが光るのが見えた。
 仰々しく立ち上がり、床に転がっているそれを拾い上げる。

「懐かしい!校章だこれ!」

 それは母校の校章だった。少し埃が被っているが、真っ黒な制服の上からでも見えるようにと白と金を基調とした豪勢な装飾で固められたそれは輝きを失ってなどいなかった。

 せっかくだから校章は手荷物に入れることにした。
 数日前まで自責と嫉妬の対象だったそれを。
 数日前から誇りと自信の象徴となったそれを。


「部屋の片隅で」

12/8/2023, 9:10:40 AM