どうして
人生で初めて
心の底からそう思った
全ての物事は予定調和だ
我こそは運命を変えた!と劇的な変化を遂げる人は
最初から運命を変えるように運命づけられているのだ
だから「どうして」などというのは無駄な思考である
「それでいいから…」
あまりにも痛々しい声に眉間にシワが寄る
聞きたくない
見たくない
でも私はこの男の哀れな恋心の顛末を
見届けなければいけない
そして終わらせなければ
この男が必死にかけた私に繋げた命綱を
無慈悲にもハサミでちょんぎらなければ
「それでいい、君の恋愛対象が男じゃなくても、俺は…それで……そんな君が……」
「そんなのは無理だよ、私は無理だ。
だから諦めて、お願いだから」
彼はついに涙と嗚咽をこぼしはじめた
可哀想に、本当に可哀想に
この男は本当に良いやつなのだ
それが
どうして、
どうして私なんかに恋してしまったのだ
同性しか好きになれない私などに
「男じゃなければよかったね。
男じゃなければ、私はあなたの事を好きになっていたと思う」
「俺は、君が女じゃなくても君のことを好きになっていた!!!!性別なんか…どうでもいいだろ……」
「どうでも良くないんだ、私にとっては。」
「どうしても変えられないものなのに?生まれつき俺に勝ち目は無いのかよ、どうしてなんだよ」
食ってかかってきた勢いに乗ろうかと思ったが、
私は口を閉ざし
次に思考を閉ざした
「どうして」は無駄だ
私が同性しか好きになれないことに理由なんてない
この男が無条件で私を好きだという事実に同じく
無条件で男に恋心を抱けないのだ
彼が今も必死に掛けようとしている
最後の命綱を断ち切るために
私はゆっくりと男と目を合わせた
4/4/2023, 2:24:43 PM