※軽くBL表現がありますのでご注意ください。
「いやだ。信じない」
「だから、本当だって」
「わかった、僕をからかってるんだろ。お前、昔から友達となにか企むの好きだったし」
「それは、すまん。でも今のこれは違うぞ」
「やめろよ。だって、ありえない」
「本当だって!」
両肩をつかまれ、逃げ場がなくなる。せめて視線だけでもそらそうとするのに、彼がまっすぐこちらを見つめているのが嫌でも伝わってきて、逆らえなくなる。
――だって、何年、好きでいたと思ってる?
男に興味がないのは明白だった。
学生時代は他の友達の陰に隠れて、とにかく「何人かいる友達のうちのひとり」のポジションの維持に努めた。
仮に親友、なんて関係にでもなったら絶対耐えきれず告白してしまう。そうしたら待つのは関係の消失しかない。赤の他人に戻るのだけは嫌だった。
そう、彼からしたら特別目立つ存在ではなかったはずだ。
なのに、お互い社会人になるこのタイミングで、同窓会の帰りに、告白?
長年封印した、密かな願いが何の脈絡もなしに叶うなんて、物語としてもできすぎている。
「……そうだ。今日って確か、エイプリルフールだった」
ネットで盛り上がっていたのを思い出す。毎年くだらないとどこか呆れて眺めていたけれど、自分が体験する側に回るとは思わなかった。
「そうやって嘘だって思い込もうとしてるってことは、おれのこと嫌いじゃなくて、好きだから?」
肩を掴む力が、少し強まる。
「ち、ちが」
「ああ。エイプリルフールだから、それ、嘘ってことだな」
すぐ目の前に、彼の瞳がある。
唇があたたかい。口の中にもなにか湿った感触が――
「っな、にして!」
思わず突き飛ばしてしまった。もう展開に全然ついていけない。わけがわからない。
「もう一度言う。おれはお前がずっと好きだった」
距離を詰めて、まっすぐにこちらを見つめて、同じ台詞を告げられた。
「お前もおれが好きだよな?」
ばかみたいに前向きでな彼の、勝利を確信した笑みの前に、足掻きはもはや無駄だった。
お題:エイプリルフール
4/1/2023, 4:08:29 PM