白眼野 りゅー

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「花占い、ってあるじゃない?」

 地面にしゃがみ込んで、こちらを見もせずに君は言う。

「あれでしょ。君は僕のことが好き、嫌い、好き、嫌い……ってやつ」
「そう」


【好き、嫌い、嫌い、嫌い……?】


「でもさあ」

 つん、と足元に咲いた花を指先でつついて、君は続ける。

「あれ、おかしいよね」
「おかしいって、何が?」
「好き、嫌い、好き、嫌いって、交互に繰り返していくじゃん。でも、好きと嫌いって、そんなに何度も往復するような感情じゃないと思うんだ」

 君が、足元の花を摘み取って、その小さな花びらに手をかける。

「好きの次が嫌いは、分かる。でも普通、一回嫌いになったら、その先はずっと、嫌い、嫌い、嫌い……」

 はらはらと、残基が減るみたいに花びらが散らされていく。

「それじゃあ、占いにならないじゃん。最初から結末が決まっているなら」

 ふわ、と風が吹いた。ちぎり取ったばかりの花びらが君の手をすり抜け、髪に絡んだ。

「あ……」
「はは、似合ってる」

 笑いながら君に近づき、髪についた花びらに手を触れる。それを抜き取るとき、ふと思い付いて

「好き」

 と、言ってみた。花占いに使う花の花弁が、全部一枚だったらいいのに。一度心変わりしたら取り返せないと言うなら、好きから変わらなければいいのに。

「そうね、結末は、決まってる。何もしなければ続いていくだけの感情も、きっかけ一つで裏返るから」

 ねえ、花占いって普通、好きから始まるでしょ? と君は続ける。花びらは残り一枚。

「好きから始まる感情は、優しく髪を触られるだけで元のところに戻る呪いよ」

 最後の花弁が地面へ落ちる。「好き」の言葉がそれに重なる。

6/21/2025, 3:44:26 AM