「もう二度と相棒は持たないって決めてるんだよ」
戦場で見かけた戦いぶりに惚れ込んで、手を組まないかと、酒場で呑んでいるところに押し掛けると、彼は私にそう吐き捨てた。
そういう言い方をするということは、前には相棒がいたってことだろう。独りより二人のほうが生存率が上がるだろうに。
意気込む私の襟首を、酒場のマスターがむんずと掴んで引きずり、彼から離れたところで、苦渋に満ちた顔で告げた。
「あいつの相棒は、あいつをかばって死んだんだ。古傷を抉り返すんじゃあない」
その言葉に、脳裏に蘇る光景があった。
『おまえはオレの最高の相棒だ。二人で世界のてっぺんを目指そうな!』
傭兵には到底向かない優しい性格なのに、剣を振るう私に付き合って、共に戦場へ出て。
初陣であっけなく逝った幼馴染。
あの時、もう二度と他人を巻き込むまいと誓って、独りで戦場を駆け、それなりに名の知られる傭兵になった。
だけど幼馴染はもういない。
グズグズ引きずるのはあいつも望まないところだろうから、新しい相棒を探し続けて、やっと私の目にかなう相手を見つけたのだ。
「私は諦めないよ」
マスターに不敵に笑み返す。
私は彼を相棒にすることを諦めない。次の戦場で見せつけてやろう。
私はおまえの隣に立つに相応しい実力の持ち主だと。
もう二度と、おまえに喪失感を味あわせないと。
倒れる時が来たら、一緒だと。
2025/03/25 もう二度と
3/25/2025, 12:08:44 AM