銀時計

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『無色の世界』6/44
目を開ければ、また退屈な色が私を迎える。
ただでさえ無機質な空間に舞い散る灰を吸いながら、カーテンを開ける。
太陽は鈍く輝き、くすんだヴェールが地に下りる。
黒い風になびく木々は梢まで色を失った。
鉛のような水を進む魚の鱗ももはや岩石と化した。
遥か彼方で白煙が昇りやがて薄く雲を覆う。
絶えず降り注ぐ灰に塗りつぶされたこの世界。
カーテンを閉めて、ひとつ、灰を吐き出す。
帰ろう。灰も光も白も黒も存在しない、無色の世界へ。
目を閉じれば、また退屈な色が私を迎えるだろう。

4/18/2024, 1:47:22 PM