エリィ

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 ざあざあと雨が降り続けるこんな天気の日には、たいていろくなことが起こらない。

 ただでさえ雨でゆううつだし。
 コンビニでちょっと買い物しようと傘を入り口に置いたら、出るときには傘が消えている。
 仕方がないのでビニール傘を買ったら、はみ出した肩が濡れる。
 トドメには路肩を歩いてたら車に水ぶっかけられてびしょびしょになった。
 救いはカバンの中身が無事だったということか。

 早く家帰って風呂入ろう。
 そんで温かいご飯食べよう。

「ただいま〜」

 俺は、今日の食事当番の兄貴が作ってくれているだろう温かいご飯を期待して玄関を開けたが、そこは真っ暗だった。
「あれ?」
リモートワークの兄貴は、大概この時間には家にいるはずだけど。
 部屋の明かりをつけて、台所に入る。テーブルの上には、慌てて作っただろう歪なおにぎりが2個と、兄貴の几帳面な字で書かれている書き置きがあった。

「メッセージ送ったが既読がつかなかったので仕方なく家を出た。
今晩は飲み会でご飯が作れない」

――マジかよ

 確かに、大学のサークルで友達と遊んでいて、スマホチェックしてなかった。サークル仲間と一緒に食べに行けばよかったな、と後悔してももう遅い。

 俺は仕方なく空腹のままシャワーを浴びようと、風呂に入り、ただでさえ冷えた体に、間違えて冷たいシャワーを浴びる。
 慌ててお湯にしたけれど。

 さすがにシャワー派の俺でも、あまりの寒さに今日は湯を張って暖まる。
 その後おにぎりを食べて、なんとか落ち着いた俺は、ソファに横になってスマホをいじったまま寝落ちした。

 翌朝。
 俺は熱を出し、昨日の夜遅くに帰ってきた兄貴に看病されることになる。
 俺は兄貴が作ってくれたおかゆで温まりながら、ため息を付いた。

 昨日は最悪だった。
 まあでも、看病されるのは悪くないか。



お題:最悪

6月2日に書いた兄弟がシリーズ化するかもしれません……

6/6/2023, 11:09:20 AM