でも、きみには、さよならが似合うね

Open App

すっかり緑が混ざってしまった桜は、私の目を釘付けにした。
その桜は通学路にあったものだから、桜の花の数がだんだん増えていくのを楽しみにしていたものだった。
けれど、その美しい花は青々しい緑色に侵食され、何故だか濁っているようにみえて、私はなんとも言えぬ胸の苦しさを覚えていた。

綺麗な桃色だった。それだけに、とても残念であった。
目線を地面に落とせば、泥に塗れ、無惨な色になった花弁がそこら中に撒き散らされているのが見えた。
人々は花弁を踏みつけて歩いていく。そこには哀れみもなく、かと言って悦びもなく、ただ、当たり前のものとして、気にもしていないのだ。

だが、それらに間違いはなく、当たり前であった。
その美しい桜は、永遠に続くものではないから。
そして、また春の巡りで出会えることを知っているから。
散りゆく定めのその花々が、なお美しく咲いていようとも、それは己に関係はないのだから。
当たり前に、気にする必要がない。
きっと、そうなのだろうとも。私はちゃんと分かっていた。


ああ、だが、それでも、悲しいのだ。
誰の目にも止まらなかったそれは、誰しもが美しいと思っていたものなのに。
なんども春の巡りが来るその中で、その桃色がグレイに変わりゆくその無情さが、私は痛ましく、憎らしく、そして、当たり前と思ってしまうことが、悲しかった。

風が吹いて、花弁が落ちる。
なんて綺麗で、優雅で、そして、弱いのだろうね。
今日、私にとっての初めての初恋が、散っていった。

5/7/2026, 1:10:41 PM