Open App

それはまさに一瞬のことであった。
「あ」
という声が出たのと彼女が車にぶつかって飛ばされたのは同時だった。残酷なことに、彼女は次のデートの約束を置いたまま死んだしまった。
結婚詐欺を始めてかなり経ったが、相手が事故死してこちらが香典を渡さねばならなくなる日が来るとは思わなかった。そして近ごろ業績の悪かった自分はこの案件のせいで物理的にもクビだろう。
「クソッ」
夜逃げが上手くいったとしても、この先ロクな人生は待っていない。どうしようもなくて苛ついたまま空をむなしく見つめると、小雨が降り出した。雨はすべてを隠して今日だけは何もかも忘れさせてくれるような気にさせた。

11/7/2024, 12:40:22 AM