学生の話
寒さの中に感じる暖かさ。
───
「お疲れ〜」
「あぁ、お疲れ様」
週の真ん中となるとやはり疲れが溜まってくるものだが、今日だけは条件が違う。
なぜなら、今日は隣の彼とファミレスで勉強会ができるからだ。
お互いに部活がない日は共通で水曜日しかない。
そこで、学年トップの成績を誇る彼に勉強を教えてもらうことにした。なんだか話を聞いてると理解しやすいし、居心地がいいからだ。
「今日は駅前のファミレスでいい?」
「お前が集中出来ればどこでもいいぞ」
彼の寛容な性格も私からするととても嬉しい。
「ここも分からないのか」なんて言われることもないから、分からなかったらすぐ聞ける。し、教科書より分かりやすく教えてくれる(私理論)。
「いつもありがとうね、ほんと助かってる」
「俺自身も教えることでより理解を深められるからな。こちらこそ助かっている」
「そう言って貰えると気が楽だよ〜」
そう話しているものの、今日の寒さはなんだかごまかせない。
駅まではビルが立ち並んでいるため、日陰が続いていて日向よりも寒いのだ。
今日に限ってマフラーも忘れてしまったし、ワイシャツの襟で何とか凌ぐしかない。
「…今日なんかいつもより寒いね」
「その格好をしていればそうだろうな。あと明日から大寒波が来るらしい」
「あ〜しくじった、最悪」
格好まで指摘されちゃったし、なんだか恥ずかしい。
あぁ〜さぶ…と言いながら制服のポケットに手を突っ込む。うわ、ポケットも冷たいし…
そうしていると、ふわっと首元が暖かくなった。なにこれ、温風でも来た?
首元を見ると、見覚えのある柄のマフラーが目に入った。
「…え」
「寒いだろう。俺のマフラーでも巻いておけ」
「いやそっち寒いでしょ」
「お前の寒そうなのを見ている方が寒い」
「そうなの?…まぁ、ありがと」
「あぁ」
マフラーを触ってみると、ふわふわして優しく感じる。
ぶわっ、と顔に熱が集まったのは、急に暖かくなったからか、それとも──────
───おまけ───
「今日も付き合ってくれてありがとね」
「あぁ。…明日の放課後は空いているか?」
「え、明日も勉強会開いてくれるの?明日顧問の先生いないから多分部活ないけど」
「分かった。では明日、出かけに行きたいところを考えておいてくれないか?」
「…それは、どういう…?」
「俺はお前とどこか出かけてみたいと思ったのだが…だめか?」
「えっ」
20250129 【日陰】
1/29/2025, 10:46:58 AM