薄墨

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オレンジの丸い光が、山の間からはみ出している。
白み、薄い水色に染まった空に、橙の日の出の光がゆっくりと満ちている。

冷たい朝の風の中、山の向こうから登る日の出を見る。
御来光だ。

そういえば、昔、人々は太陽を神様だと考えたらしい。
太陽系において、世界は太陽を中心に回っているから、それはひょっとすると遠からず、ある意味真実なのかもしれない。

太陽が、半熟の黄身のように山の隙間で膨れて、光を空に溶かしながらゆっくり、ゆっくり上がっていく。

今日の朝ごはんには目玉焼きが食べたい、と思う。

太陽はのんびりと上がっていく。
周りの空気がだんだん温まっている気がする。

道草を嗅ぎ回っていた飼い犬がふと顔を上げた。
道の向こうから、一人のお爺さんがやってきていた。

「おはようございます」
挨拶をすると、向こうから現れたお爺さんもにこやかに会釈をされた。

お爺さんの後ろにも、太陽の光が満ちている。
温かい光を背に、お爺さんもゆっくりゆっくり、こちらへやってきた。

だんだん、周りの空気が温まっている気がする。

お爺さんは、隣まで来ると、目を細めて、日の出を眺めた。
飼い犬が落ち着かない。
日はゆっくりと上る。
もうすぐ日の出は終わり、朝が来る。

そろそろ行こうか、そんな気になる。
飼い犬が落ち着かなさげに、リードを引くからだ。
私は名残惜しく日の出から目を逸らし、道の方へ向く。

その時、私は初めて気づいた。
隣のお爺さんの背が、太陽が当たっていないのに、温かな光を浴びていることに。

御来光だ。
飼い犬が落ち着かなさげにリードを引いた。

1/4/2025, 1:46:30 AM