ある日、星図からとある星座が消えてしまった。
世間は騒然となり、その日は一日中その話題で持ちきりだった。
消えた星座はどこに行ったのか。
所変わって、ある村や町々。
その日、体のどこかに七つの点の痣がある赤ん坊が七人生まれた。
赤ん坊たちはそれぞれ七つの内のひとつの点が濃くその他より大きく、まるで何かの使命を表しているかのようだった。
その七人が冒険の旅に出て合流し、大冒険となるのは、また別の話。
/10/16『消えた星図』
「昔さ、『来いって言うから会いに来た』って、恋と愛の言葉遊びあったじゃん?」
「え?知らない」
真由美が伸びをしながら言う。
由実は真由美の言葉に首を傾げた。
「あったの。あれさ、逆だったらどうなんだろうね?」
「愛と恋?」
「そう。逆じゃなくてもいいか。さっきのだと、恋と愛を足し算する感じだったけど、愛から恋を引いてみたり」
「難しいこと言うね」
ビルの屋上で、突き放すように手すりから体を離しながら真由美は思考した。
「愛たいから恋焦がれる、とか?」
「引き算になってないじゃん」
「んー。難しい。愛から恋引いたら何になるんだろ?」
「何の話?愛から恋引いたのに残ったものって、愛でしょ」
由実が頭を悩ませる真由美に言った。
「え?」
さらりと答える由実に驚いた真由美が疑問符を返すと、由実は悩むことなく答えた。
「恋してる気持ちが無くなっても残ってるものって、愛情だよ。だから一緒にいるんでしょ?世の夫婦とか見てごらんよ」
「夫婦?」
「ぐちぐち言いながらも惰性と言う名の情で未だに一緒にいるものが、愛以外のなんだって言うの」
「由実、あなたそんな深い考え出来る人だったの……」
真由美が感心したように言うと、由実はカチンときたようだ。何か文句を言っていたが、真由美はそれには触れることなく、自身の思考の海に溺れていった。
/10/15『愛―恋=?』
何かをないことを『◯梨』という。
いわゆるネットスラングだ。
例えば、『子梨』なら『子供なし』の意だ。
「でもさ、それって梨に失礼じゃない?子梨なんて、小梅とか小桃みたいに可愛いものだと思ってた」
カフェで季節限定のアイスティーの氷をつつきながらカオリが言った。
「言わんとすることは分かるけどねえ」
肘をつき、カオリの言葉に苦笑を漏らす麻弥。
「しかもさ、梨好きな人にも失礼じゃない!?そんな侮蔑の言葉に大好きな梨を使われたくないよ!」
机を叩かんばかりの勢いで言ったカオリに、麻弥は吹き出さずにはいられなかった。
「あっはは。そうくるか。別に侮蔑の意味が全部ってわけじゃないよ。ネット上の情報として分かりやすく表現するためのものの時もあるし」
「そうなの?でもひどい!梨だって傷ついちゃう」
そう憤慨するカオリの元に、これまた季節限定の梨のデザートが運ばれてきた。
/10/14『梨』
10/16/2025, 10:40:02 AM