G14

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 カーテンから差し込む光で目が覚める。
 よく眠れたからか、体が軽い。
 やはり健康の秘訣は8時間睡眠だな。
 昨日残業祭りで夜遅かったかったから、なおさらだ。

 そして顔を洗った後は、一杯のコーヒー。
 やはり朝飲むコーヒーは格別だ
 靄がかかった頭が徐々に晴れ渡り、思考はクリアになる。

 さて頭がスッキリしたところで、これからの事を考えよう……
 これからの事……
 遅刻の件をどうするかだ
 つまり俺は寝坊してしまったのだ

 ちゃんと目覚ましをかけていたのに、こんなことになるなんて。
 目覚ましが鳴った記憶はあるけど、二度寝してしまったようだ

 日が昇る前に家を出ないといけないのに、既に日が昇っている
 これでは、どうあがいても遅刻は確定である。
 いっそ休みにするか?
 うん、それがいい!

 となると理由が必要だ。
 それにギリギリまで会社に連絡を入れなかった言い訳もいる。

 鉄板は『親に不幸があったから』だけど……
 却下。
 以前それ使って怪しまれたんだよなあ
 
 さすがに三人目の親を死んだことにしたら追求された。
 『実は義理の父親がいて』――という事にしたけど、あの目は信じてないだろうな。

 兄弟は――
 駄目だ
 もう何人死んだか分からない。
 二桁はかるく行くな
 一人っ子なのに。

 仕方ない。
 一度電話し、なにか大変な事が起こったテイで誤魔化すとしよう。
 スマホを取り出し、上司にかける

「もしもし俺です。
 途中お婆さんが困っていたので、トラックに轢かれそうになった猫を助けて、魔王を討ち滅ぼしましてたんです」
 自分でも何言っているか分からない。
 もう一回言ってくれと言われても、言えないだろう
 だが何となく大変そうなのは察してくれるはず。

 だが現実は甘くない
 スマホからは、上司のため息が聞こえる。
 もうダメだ

「寝ぼけているの?
 残業で遅くなったから、今日は振り替えで休みって言ったでしょ」
「えっ」

 俺は、昨日の記憶を掘り起こす。
 そう言えば、帰り際にそんな事も言っていたようないなかったような……
 限界を超えて仕事したので、記憶が曖昧だ。

「それにもう夕方。
 連絡をいれるには遅すぎるわね」

 俺は、目が覚めてから初めて時計を見た。
 現在の時刻、PM四時。
 今日もあと少しだ。

「私ももう少し寝るから、電話切るわね。
 あなたも寝足りないみたいだから、すぐ寝なさい」
 上司は俺の事を、疑うこともなく、アッサリと電話を切る。
 なんてことだ。
 俺は寝ててよかったのか……
 安堵するとともに、後悔が押し寄せる。

 寝てもいいなら、心底眠りたい
 だが俺はコーヒーを飲んでしまったばかりに、もう眠ることはできない。
 俺はヨロヨロと立ち上がり、部屋のカーテンを開ける。

「綺麗だな」

 窓から見える夕日は、人生で一番キレイな夕日だった

10/12/2024, 3:10:05 PM