前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこには宇宙サメだのドラゴンだの、もちろん普通の人間だの、それから幽霊や妖精なんかも、
ともかく様々な境遇、様々なルーツ、様々な故郷をもつ多種多様が、様々な仕事をしておりまして、
前回投稿分では難民シェルターのゲート付近で、検査員が不審者を確保など、したのでした。
その確保の方法が
まさかの酸素も液状化するようなオヤジギャグを
冷気の魔力に変換して、
不審者の足を凍らせてしまう、というもの。
宇宙サメの仕事を見学しておった東京出身の稲荷子狐は、極寒魔法に釘付けです。
ギャグのクオリティはともかく、
魔法のエフェクトが、カッコよかったのです。
いつまでも、忘れられない、いつまでも。
だって子狐、カッコいいのが大好きなのです!
「やりたい!キツネも、アレ、やりたい!」
いつまでも、忘れられない、いつまでも。
コンコン子狐は検査員のお仕事の見学を終えて、
さっそく、こういうことを相談できそうなお嬢さんのところへ、走ってゆきました。
まぁ子狐自身が稲荷狐でありますので
ふぉっくすファイアは使えても
ふぉっくすブリザードが使えないから、
冷気の魔法を羨ましがったのかもしれません。
「…––で、ホトじゃなくて俺様のところに来たと」
「おねーちゃん、おねがい、おねがい。
キツネも、びゅーびゅー、やりたい」
「やっぱそういうのホトの管轄だと思うけどなぁ」
さて。十数分後の世界線管理局、経理部です。
窓際の特別スペースでは、スポンスポン、
特製コタツに入ってボタンを押して押して、
コタツのカゴの上に、ミカンを生成しておる天才エンジニアのスフィンクスが、
子狐のお願いを、なんとなく聞いています。
「あのね、すごかったの」
「ほーん」
「びゅー、びゅーって、さむかったの。
にげたヤツの足、こおっちゃったの」
「ほーん」
「キツネもやりたい」
「『やりたい』っつってもさ。
できねぇことはねぇけどさ」
いつまでも、忘れられない、いつまでも。
コンコン子狐は尻尾をぶんぶんぶん。
自分が見た冷気魔法の、発動に至る杖振りの真似を嬉々として為すのです。
「やんやんや!やんやんやんや!
ふとんはふっとんだ!」
「はいはい」
「やんや!やんやんや!やー!」
「はいはいはい」
ひとまず、そいういうのは保護者とお手伝い監督者にも、相談しておこうな。
スフィンクスはガシガシガシ、子狐の頭と背中を撫でてやりながら、
片手でクリスタルタブレットを引っ張ってきて、いくつか子狐に持たせても大丈夫そうなおもちゃの、完成済み図面を探し始めました。
「おねーちゃん、おねーちゃん」
「あ?」
「あのびゅーびゅー、なんで、じゅもんが、フトンハフットンダなの?」
「うん、そのあたりもホトに聞こうな」
「おねーちゃん、知らないの?」
「知らねぇなぁ。それ作ったの、多分この俺様じゃなくて、別の世界のどっかの誰かだもん」
「なんで?なんで?」
「どっかでそういうのが必要だったんだろ?」
「なんで?」
「よし、おつかい行ってこい」
「おつかい!おつかい!」
いいか、この図面とメモのセットをだな、
収蔵部収蔵課のホトと、環境整備部難民支援課のダマジカと、いちおう法務部執行課のツバメにな、
それぞれ、渡してこい。
スフィンクスは子狐に、子狐用の書類キャリーバッグを背中に付けてやって、
そして、その中に紙束セットを入れてやりました。
「いってくる!」
コンコン子狐は、ばびゅん!
頼まれたおつかいを遂行すべく、経理部のブースから跳び出してゆきます。
子狐から図面とメモを受け取った局員たちは、
まずメモの内容を見て、メモに付属のアンケートに1個のチェックを付けて子狐に持たせ、
最終的にスフィンクスがアンケートを精査して、
結果、子狐に子狐用の、無難な基本魔女っ子セットを出力してやったとさ。
「まほう、でない。つかえない」
「そりゃ許可制だからな」
「きょかせー?」
「そう。許可制」
キョカセイ、きょかせい。
子狐はその言葉の並びを、多分いつまでも、忘れませんでしたとさ。
5/10/2026, 3:17:37 AM