「天国と地獄」
お前の罪は私が背負おう。だから、何も心配する必要はない。
そう言われたのは、わたしが赤い目の男に会って数ヶ月したところだったと思う。
赤い目の男と会う前のわたしの人生は、全てが苦痛でしかなかった。元々、愛想の良いわけではなかった。そのせいか、親戚にたらい回しにされ、結局引き取られた先でも捌け口にされる。わたしの年は、いくつか忘れてしまいかけていたけど、確か12であったと思う。
無論、学校でも自分の噂が流れているのでいい気はしなかったが、幾分かマシだった。
そんなとある日だった。
夜遅くに家の外へ追い出されたのは、きっと酒でも飲んで気がおかしくなっていたのだろう。髪を掴まれ引きずられながら外へほっぽり出された。
雪が積もっていて、朝まで生きられるかどうか。
いっそこのまま眠ってしまえば楽なのではないか。そう思いながら目を瞑った。
何らかの気配を感じ、顔を上げる。月明かりが眩しい夜だった。
目の前には人。自分よりも遥かに大きかった。180…いや190センチであろうか。そんな事よりも、どうして人がこんなところにいるのだろう。
赤い目が、ぎらりと光ったのを今でも覚えている。
それが、赤い目の男とわたしの出会いであった。
その赤い目の男は、わたしを見るなり奥歯をぎしりと音がするほどに噛んで、わたしを抱えた。
寒さでおかしくなったのだろう。疲れと寒さで目が閉じる。
そのあと起こったことは知らない。
気付いたらマンションの一室にいて、赤い目の男がご飯をくれて。
どうしてこの男は私にこんなに尽くしてくれるのだろう。
不思議でしょうがなかった。
赤い目の男。
初めて会ったはずなのに、どうしてこんなに。
わからない。しらない。私は知らない。
ただ赤い目の男の眼を見ると、どうしても嫌なものが映る。
誰だ。私はお前なんて知らない。
弓矢で射られたその男を、、私は知らない。
5/27/2024, 2:47:33 PM