薄墨

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眩しい。
眩しい眩しい眩しい眩しい!

あなたが私に手を差し伸べている。
今朝の夢だ。夢。分かっている。
でも、現実でも何度もあったことだ。

そうだった。
いつも…あなたが現実にいた過去も、夢の中の今でさえも、私はあなたのその姿に、感謝もせず、ひたすらその輝きの眩しさに発作を起こして、ただただそんなことを心の中で呟いていた。

目を眇めて見つめるしかなかった。
強い、強い、輝き。
忌まわしい、輝き。
憧れ。

それだけ…記憶の中で、目の前で、いつも格好良くて、頼もしくて、だから、まともに直視できずに、斜に構えて眺めるしかなかった。

屈託のない笑顔で、当然のように人に手を伸ばし、誰よりも人気者で優しいくせに、ひたすらに不甲斐ない、誰からも相手にされないような私のピンチにも、必ず駆けつける。
見返りを求めないみたいな顔で、いつも優しく、私に声をかける。

差を見せつけられたみたいで、必死に突っぱねる弱者にも何食わぬ顔で、スラリと形の良い手を差し伸ばす。
だからといって、私の僻みと苛立ちを分かったかのように、威張ってみせ、まるで恨まれることも織り込み済みのように、同じ土俵に降りてくる。
私の心の中を見通したように。
本当は助けられたがっていることを、分かってるかのように。

助けられた方は、それに気づいて、尚も手を伸ばせるあなたの余裕と大人な様子が、憎くて、憎くて、でも、有り難くて、だから、眩しさに目を細めるしかない。
それがどんなに屈辱的で、見たくなくても、私たちも光がなくては生きていけないから。

同期の中で、私を疎まずに話しかけてくれる、唯一の人だった。
努力も人への気配りも意欲さえない私に、最期まで期待してくれた人だった。
私のどうしようもない失敗も、根本的な問題も、一緒に向き合い、解決しようとする人だった。
弱みや欠点なんて一つも見つからない、隙のない人だった。

だから、誰にも気づかれなかった。

どこかで聞いたことがあった。
「光が強いほど、影も濃い」
「本当に助けが必要な人は、助けたいと思う姿をしていない」
ネットで見たその言葉を、私は自分の都合の良いように自分に言い聞かせるためにしか使って来なかった。
でも、その意味をようやく理解したのだ。

あなたが、頽れるようにして、私の前から去ってから。
この会社に出すための辞表を抱えたまま、電車に飛び込んでから。

私はあなたの何も知らなかった。
あなたの自宅も、出身も。
その生い立ちも、抱えたものも、苦しさも。
あなたにあんなに甘えて、あんなに突っかかって、あんなに論ったのに。

本当に助けが必要なのは、誰だったのだろう。
今日も、忙しい業務の中で、私は思う。

そして、輝きを直視できなかった、自分の目を恨み、強すぎる輝きだったあなたを、お門違いに恨むのだ。
あなたの穴を埋めようとして、かえって広げながら、私は今日もあの輝きを思う。

燃え尽きた輝きは、もう戻っては来ないのに。

2/17/2025, 11:10:14 PM