ほろ

Open App

明日から冬休みね。どうしましょう、やりたいことが沢山あるわ。あら、私は別荘でウィンタースポーツを嗜んでくるわよ。それじゃあ私は──

「何あれ」
窓から離れない私が気になったのだろう。クラスメイトの男子が私の視線を追って、首を傾げた。
私は下でお上品に笑い声をあげる人達を見たまま、苦笑いする。
「隣のお嬢様学校の冬休み予定自慢大会」
「それ、見てて楽しいか?」
「全然」
でも、良いなぁとは思う。
私の冬休みの予定は、雪のように真っ白だから。決まっている予定と言ったらせいぜい、こたつでみかんやアイスを食べるくらいだ。
「じゃあ、窓閉めてくれよ。寒い」
「そうだね、ごめん」
勢いをつけて窓を閉める。バン、と跳ね返り、少し隙間ができた。
何やってんだよ、と男子が呆れたように窓をしっかり閉めて鍵をかける。
「怒ってんの?」
「全然」
「さっきからなんだよ……あ、もしかして冬休み暇?」
「全然」
「おい……」
別に、怒ってはいない。暇なのは事実だし。どちらかといえば、それをコイツに知られたのが嫌だった。
私の返答が気に食わなかったのか、男子は厶、とする。
「せっかく良い話持ってきたのに」
「…………良い話?」
「なんだと思う?」
「………………さあ」
「これ」
差し出されたのは、映画館のチケット。ぱ、と顔を逸らす男子に、思わず詰め寄る。
「何これ、ねえ。誘ってる?」
「悪いか!」
「全然」
「おま……その全然ってのやめろ」
「んー……じゃあ、悪くない。最高。冬休み予定なかったし」
「ん」
よし。と言わんばかりにチケットを押し付けられたので、ありがたく受け取る。男子は目的を達成したらしく、「後で連絡する!」とさっさと教室を出て行った。
チケットを見つめながら、息を吐く。
とりあえず、冬休みの予定に困ることはなさそうだ。

12/28/2023, 12:30:17 PM