Ayumu

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 見つめられて、また、動けなくなった。
 いわゆる「蛇に睨まれたカエル状態」がふさわしい。
 だって、全然考えが読めない。
 唇は笑いのかたちを作っているのに、瞳は底なし沼のようにひたすら暗い。そこだけ切り取ると、怨恨を向けられているんじゃないかと錯覚するほどだ。

「お前、俺に何が言いたいんだよ」

 今までは言い知れない恐怖が邪魔をして何度も問いをためらった。
 いい加減、限界だった。どんな答えでもいいから、種明かしをされて楽になりたかった。

「さあ、何だと思う?」

 それは反則じゃないか。

「わたしから言えるのは、答えはあなたが持っているってことね」

 双眸が少し細くなって、睨んでいるようにもとれる表情に変わる。唇の両端がさらに持ち上がる。変に整っているからこそ、妖しくも、怪しくも見える。
 こっちに解答権があるだって?
 確実に言えるのは「意味がわからない」しかない。
 当たり前だろう?
 校内で何度かすれ違った程度の認識しかないやつに、かける言葉なんか見つからない。


お題:見つめられると

3/29/2023, 8:11:25 AM