ある男に言った。
「お前に有り余る程の金をやろう。」
男は言った。
「代わりに魂でもよこせと?」
「いいや。
時間でいい。
お前のこれから手にするはずだった時間だ。」
「ふざけるな!
そんなのお金を手にする意味がない!」
「では、健康にしようか。
これからお前は有り余る金を手にする。
死ぬほどの痛みと苦しみに苛まれるが、長い寿命を遂げられることを約束しよう!」
別の男に言った。
男は名もない絵描きだった。
「お前に有り余るほどの金をやろう。
代わりにお前の両目をよこせ。」
「ふざけるな!
おれは金を手にしたら、画材を思うだけ買って、たくさんの土地を旅して美しいものを見て絵にしたいんだ!もちろん自分の描いたものも目にしたい。
目をなくしたら意味がない!」
また別の男に言った。
あらゆる学問に精通した、とても賢い男だった。
「お前に有り余るほどの金をやろう。
代わりにお前の全ての記憶をよこせ。」
「冗談じゃない!
わたしはこのあらゆる知識を世界に役立てるために金が欲しいというのにそれでは全く意味がない!」
人は金があったらなんでもよこすと聞いていたのに全く話が違う…。
しょぼくれた悪魔の腹が、ぐうと音を立てた。
「お金より大事なもの」
3/8/2026, 2:54:57 PM