名前の無い音

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『思い出』


人間は 思い出の塊で出来てる

駅からの帰り道 ふとした瞬間に
『ここで 車から降ろしてくれたな』 とか
『この道は 手を繋いで歩いたな』 とか
そんな記憶が浮かんできて
ちょっとだけ 私は苦笑いする

今の私が 不幸せなのかというと
そんなこともなく
じゃあ幸せなのかと聞かれると
「まぁまぁかな」と答えられる
そんなもんだ

生まれてから住んでいた町より
この街に来てからの方が少し長くなった
ずいぶん長生きしたような気もする

あの町も好きだったよ
頑張って 大人になりたくて
生きていた町

この街も好きだよ
必死に 何かにしがみついて
生きている街

だんだん
1年が早く過ぎ去るように思えてくる
5年 10年 あっという間だ
そんな中で 沢山の出来事が
思い出となって 私の中に 積み重なっていく


人間は 思い出の塊で出来ている

私は 今日もこの街に生きる
思い出を反芻しながら
ただ ただ 早くなった時間の流れに
身を任せながら 生きていく

私も 誰かの記憶の片隅に
何かの欠片を残しているかもしれないな

あぁ ごめんよ 邪魔して悪いね
あなたも どこかで苦笑いしているのかな

苦笑いで……済んでいるといいなぁ

6/12/2022, 8:50:38 AM