蜜柑

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「もう二度と、あなたとは会いたくない」そう告げた君はただ苦しそうに顔を顰めていた。「……どうして?」浮かんだ言葉は色々とあったはずなのに、結局その疑問だけが口から漏れ出す。君はただ静かに、けれど苦しそうに言った。「……あなたを、不幸にしたくないから」君はそう言って離れていく。伸ばした手は届いたのに。君は振り払ってしまった。「……さようなら」告げた言葉に、遠ざかる背中に。僕は、何も出来なかった。これ以上何かを言い募ることは出来るけれど、結局それだけが事実だった。--君のいない、春が来る。君の姿は、もうどこにも見えなかった。

3/24/2025, 10:16:14 AM