濃霧

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夕暮れの駅で、彼女は「また明日ね」と笑った。
その笑顔が、最後になるなんて知らなかった。

次の日、彼女は来なかった。
その次の日も、そのまた次の日も。

やがて僕は、ホームの端で落ちていた古い定期入れを見つけた。
中には、僕と撮った小さな写真と、折れたメモが入っていた。

『言えなくてごめんね。
明日が来る保証なんて、ほんとはどこにもなかった。』

電車が通り過ぎ、風が吹く。
あの日の「また明日ね」が、胸の奥で何度もこだました。

人は、永遠を信じて約束をする。
けれど幸せはきっと、刹那だからこそ美しい。

4/29/2026, 3:27:13 AM