イブリ学校

Open App

友達の作り方を聞かれた。
私が幼稚園の年少の担当をしていたとき、生徒にこっそりと耳元でそんな事を聞かれた。それは、可愛い質問だったが中々にシビアな質問でもあった。なぜならば、私自身友達の少ない学生生活を送ってきたからだった。私は悩んだ挙げ句、無難に「お昼休みに遊びに誘ってみたらどうかな、例えば一緒に泥団子作るとか」そう答えた。それを聞いた、その子は不安そうな顔を浮かべながら「じゃあ先生もついてきてお願い」そう言った。かくしてその子と私の友達泥団子でゲットだぜ作戦は始まった。

いよいよお昼休みに入り、まず初めにその子はいつも砂場で遊んでいる男の子を誘いに向かった。私から見ても、泥団子に誘うにはナイスチョイスだと思った。しかし、その希望は一瞬で砕かれ、その子はトボトボとこちらに帰ってきた。理由を聞くと、「砂はそんなに甘くない、今日はひとりでお城を作るから無理」と言われたらしい。職人だった。確かに毎日砂場に完成度の高すぎる建造物が建っていたが彼の作品だったようだ。大誤算で泣きそうなその子の頭を撫でながら私は「プロ意識の高い子もいるから仕方ないね違う子を探してみようか」そう言った。

次にその子が狙いを定めたのは、意外にもいわゆるムードメーカーの人気者の男の子だった。私は大人しい子にターゲットを絞っているのかと思っていたが、どうやらその子は冒険家のようだった。その子が人気者の男の子と話していると何やら会話をしたあと、人気者の男の子はボールを抱えその子の腕を引っ張ってを連れて行こうとした。それを見て私はよかったと思っていると、なにやらその子は「助けて」と言いたげな顔をこちらに向けてきた。私は「頑張れ君ならできる」という意味で親指を立てたが、その子はまるで死刑宣告でもされたように首を横にふった。私は仕方がないので話を聞きに行くと、ドッチボールに誘われたが運動は苦手で無理ということだった。人気者の子には悪いが怪我があるからドッチボールはまた今度誘って上げてほしいと言い引き取ってもらった。すまない優しい人気者君、私は心の中で謝った。

その子は何か燃え尽きたような顔で遠くを見ていた。私は一言「ドッチボールもやってみたら案外楽しいかもしれないよ、怪我って言っちゃたけど」そう言って、その子の頭を撫でた。そうしていると、なんだか昔の自分と重なって見えて最終手段である先生とお団子作ろうか、を言いそうになった。その時、「先生」と声をかけられた。見るとそこには、女の子が二人なにやら泥だらけの手で立っていた。どうしたのと聞いてみると「お団子を一緒につくろう」ということだった。絶好のチャンスだと思ってその子の方を見ると、私の影に隠れてしまっていた。その子はすっかり自信をなくしてしまっていた。ここで変わらなければ私のようになってしまうかもしれない、そう思った私は、心を鬼にしてその子の背中を押し「先生用事あるから、この子と一緒に作ってあげて」そう言った。その子は不安げにこちらを見上げ、二人の女の子は文句有りげな顔でこちらを見ていたが、しぶしぶ三人で泥団子を作りに向かった。

職員室から三人の様子を見ていたがなにやら、破壊と創造をくりかしているらしく、仲良く笑ったり悲鳴を上げたりしていた。とにかく友達に成れたようで私は安心しながら職員室で一人昼食を食べた。

10/7/2023, 1:40:10 PM