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玄関口に立っていた君はあの日のまま
立ち竦む躊躇いに歓迎を返した。
久々なれば机に向かい
話題は双方尽きぬもの。
子供の頃のこと、
有名人の発見、
最近の手習い、
消えた知人の行方、
楽しいか、と問えば
それなりに、とはどちらの意か。
薄ら靡く煙の香り、
お迎えかいと見上げ、
まだまだ早いよと苦笑が返る。
来年また、と君が言い。
まだ巡らないのと一つからかう。
順番はまだまだ、と君が笑い。
なればいつか、と冗談を結ぶ。
無い脚で駆けていく、
透き通った背中を見送って。

‹突然の君の訪問。›


雨に打たれていた
透明な雨に打たれていた
傘もささず
コートもなく
無防備に天を見上げて
眦を伝う透明を
首筋を這う透明を
美しく流れるまま

き、と唇が弧を描く
重たい睫毛が流し目を佩く
羨ましいかと自由を装う

意図的に口端を下げた
見つめながら目を伏せた
羨ましいよと無知を装う

コールタールの雨の中
傘に守られ
コートに包まれ
一つの飛沫も無く生きられる
耐え難い幸いの中で

強靱を装った
無垢を装った

同じ空の下
決して触れ合わぬように

‹雨に佇む›

8/29/2024, 9:39:41 AM