やさしい嘘
天井の眩しい照明が食卓を照らす。私が手をかけ作ったハンバーグの肉汁の泡が煌めいている。私は2人分のお茶碗と味噌汁をトレーに置いて食卓に運んだ。廊下からは夫がブォーという音を響かせてドライヤーで自慢の髪を乾かしていた。
「あなた、ご飯できたわよ」
私が言うと「はーい」と味気ない返事が返ってきた。いつものことだ。
対面して食卓に着いた。夫が「美味しそうだね」と恒例の台詞を言ってきたので「そうね」と私は微笑む。
「いただきます」と私たちは手を合して食べ始めた。私は夫がハンバーグを口に入れるのを食卓に手を置いて待った。モグモグとリスみたいに頬張りながら夫はグッドポーズを私に向けてくる。
「美味しい!やっぱ君の料理は格別だよ」
嘘だ。自分でもわかってる。このハンバーグが美味しくないことぐらい。なのに夫はいつも私を称えてくれる。どんなに不味くても。
美味しそうに出来の悪い料理を食べる夫を眺めながら彼に本当に心の底から「美味しい」と言ってもらえる料理を作ってあげたい。そう思えるのも彼のおかげだ。
1/24/2025, 2:58:08 PM