『エイプリルフール』
※BL 両片思い 年下攻×年上受 ほぼセリフのみ
「きみのことが好きだ」
今日は四月一日。エイプリルフールだ。しかも時間は十一時五十九分。
「へえ、そうかよ」
「つまらないなぁ。少しくらいは焦るとか困ったふりするとかしてくれよ。友人から告白されたんだから」
「お前のこと友人だなんて思ったことないからな」
「うわ! ひどい! いくら嘘でも傷ついた!」
「嘘じゃねえよ」
ちょうど正午を知らせる鐘が鳴った。
「お前のことが好きだったからな、出会った時からずっと。こういう意味で」
「え……?」
腰を屈めてそっと唇を重ねる。
すぐに唇を離したが、友人とやらは口を開けたまま間抜けヅラを晒している。
「友人からいきなりキスされてんだから、焦るなり困るなりするのが作法なんじゃないのか?」
「だって、キス……って、なんで……」
「鐘は聴いたろ? オレのは嘘じゃないからな」
「それって」
「予防線張った意気地のねえことしてんじゃねえよ。ばーか」
「だって、僕は男だし、きみより年上だし……でももう、好きって言いたくて仕方なくて……」
「オレはお前が、そんなくだらねえこと気にする常識を持ち合わせていたことに驚いてるぜ」
「普通考えるだろ! す、好きな相手の幸せとかそういうことは!」
「お前の考えたオレの幸せってやつは? まさかその辺の女と結婚して家庭を持つだとかは言わねえよな?」
「……きみが女の子と結婚する姿は想像したけど無理だったし、家庭を持つなんて絶対無理だ。結婚した女の子が不幸になる」
「テメェ……」
「あはははは、つい本音が……じゃなかった」
「ったく。だったらなんで普通に告白してこねえんだよ」
「きみが家庭を持つのと同じくらい、僕がきみを幸せにする姿が想像できなくて……きみによく言われるように、その、僕はちょっと興味のあることに一直線で、あんまり常識とかない自覚もあるから」
言いながら、目の前の男はだんだんとしょぼくれて最後は俯いてしまった。
ったく、本当に仕方ねえ。いつもは無鉄砲を絵に描いたようなヤツなのに、オレのことになると途端に慎重を通り越して臆病になってしまう。
白い両頬に手を添えて優しく上を向かせる。そのままもう一度キスをしてから、引き寄せて抱きしめた。
「お前が隣にいる以上の幸せなんか、オレにはねえよ」
「……うん」
「で? さっきの言葉、エイプリルフールの嘘のままでいいのか?」
「きみが、きみのことが好きだ。ずっと、きみが好きだったんだ」
4/1/2026, 3:18:01 PM