終わらない夏
あー!もう今日で夏休み終わるとか信じらんねぇ!昨日やっと夏休みの課題を終えたばかりなのに。どれだけ綺麗に書き込まれたカレンダーに目をやっても事実は変わらないからため息を吐く。最後の日だと言うのに予定は入ってない。毎年この日は課題に追われているから空けていた。まさか昨日で全部終わらせると思ってなかったけど。
「え、まだ終わってないん?」
他愛もない雑談の中、課題についてぽろっと話したら彼は信じられないと言うように眉を顰めた。てかあんだけ一緒に遊んでたんだからあっちだって俺と同じぐらい進んでいないと思っていた。一気に冷や汗が背中に伝う。あれ、もしかしてやばい?
「うん…え、もう終わってんの?」
「いや当たり前やろ…今日遊ぶんやめる?」
まるで可哀想なものをみるかのように、とても深刻そうに言い放つから少し焦ってきた。しかし、これだけで折れるような自分ではない。
「えー!それは嫌に決まってんじゃん!!まだ今日入れて3日もあるんだよ?いけるから!」
遊びたいし!てか遊びやめて帰ったって結局課題やらねーもん、俺。それに、これまでの経験から真理に辿り着いている。課題って、結局学校で提出するまでに終わらせればいいじゃん?だから夏休み中にこだわる必要は無いの。なんて説明しようとした時だった。
「……わかった。じゃあ明日、朝から家来て。」
何かを覚悟したように真剣な顔で言うからとりあえず頷く。
「いーよ。何する?」
「課題。」
「えっ、やだ。」
「やだちゃう。やるの。」
「写させてくれる?」
「無理。教えるから自分でやり。」
「えー!お願いー。」
次の日、彼の家に訪れた。何度来ても大きな家と綺麗な部屋に新鮮に驚く。こいつ、俺の家遊びに来てる時どう思ってんだろ。なんて。洒落たお菓子が出てきてすぐに飛びついたけど、一つ食べたら皿を遠ざけられた。
「先課題な?」
なんだかんだ優しいから写させてくれるかと思ってたんだけど普通に解かされた。
「ねぇ、こんなの俺無理!解けるわけないじゃん!」
「どこ分からへんの?あぁ、ここは公式使うだけや。公式使わんかったらそら解ける訳ないやろ。覚えたらいけるから。」
「えー…もうさ、これ答え写した方が早く終わるじゃん。見せてよ。」
「あかん。テストどうすんの?」
「なんとかなるって。」
「ならん!あれ落ちたら補習やろ?遊べへんやん。」
「それは嫌だけどさ…」
ぶつぶつ言いながらも足りない頭を必死に回転させて課題をこなす。お昼を食べて課題を進めて、テストのない教科はちょっとだけ写させてもくれた。終わったのは結局夜の19時。まだ帰れる時間だけどせっかくだから泊まっていき?なんて言う優しさに甘えさせてもらった。
ぼやっとふかふかの布団からカレンダーを見ているとドアが開いた。
「朝ごはんやでー…あ、起きとる。」
「……おはよ。」
ドアが開いていつの間にか身支度もばっちりな友人の登場。昨日は夜遅くまでゲームしていたというのになぜこんなにもしっかり起きられるのだろう。羨ましい。寝起きの低いがらがら声で返事した自分に対して彼は少し笑った。
「相変わらず寝起き悪いなぁ。あ、そや。なぁ、今日はゲーセン行かん?夜はうちにある花火しよや。」
「え!行く!する!」
夏休みが終わるのを憂いてることを知ってか知らずか、そんな嬉しい提案をしてきたからすぐに返事をする。
「よし決まり。そんでさ、明日学校終わり駅前のかき氷屋さん行かへん?」
夏休みが終わっても、この友人と過ごす限りは毎日楽しそうだ。うん。夏休みが終わったって、まだまだ俺たちの夏は終わらない!
8/17/2025, 10:45:14 PM