無音

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【16,お題:心の健康】

心の傷が視える人に会ったことがある。

どんな風に視えるのかと聞くと、彼は「人による」と答えた。

「丸くくり貫かれたような人もいるし、棘みたいなのが無数に刺さってる人もいるよ
僕が視た中で一番すごかったのは、全身滅多刺しで血みたいなのが流れてた人」

他には何か視えるのか?

「んー、僕のこれは霊視じゃないからなぁ...
ユーレイとかも視れたら、霊能力者とか名乗ったりできるんだけどねぇ」

...辛くないのか?

「辛い?別に辛くないよ。視えたところで『この人疲れてんな~』くらいにしか思わないし」

.........

「でもアレだよね、心の健康って大事だよね~、心と体は一心同体!ってよく言うけど
あれね、わりととマジなんだよ視える人から言わせてもらうとね!」

...............

「心の健康は、体の健康に直結します。これメモっときな!」

明るく喋る彼は、気付いてないのだろうか?


ーーー君の心が今にも壊れそうなほど、ボロボロだということに。


僕の目を通して視た君の心は、手で触れられないほど無数の針で多い尽くされていた
ドクドクと苦しげに脈打つ度に、赤い液体が滲み出て命を削っているようだった。

気付いてないわけないんだろう?知ってて目をそらしてるんだろう?

なんで?、とは聞けない。ただ、いつかは話して欲しい


「結城」

「ん?何?」

ニッと笑って語りかける。

「飯行こうぜ、俺が奢るわ」

パアッと君の顔が変わった。

「マジ!ありがとー優真」

日が暮れ出した道を歩きながら思う。

抱え込みすぎないでくれ、話したい時でいい頼ってくれ周りを
お前は、お前が思っている以上に愛されてるよ。






8/13/2023, 12:04:28 PM