いつもいつも、突然だった。
腕を引く、髪を掴む、名を叫ぶ。
力任せの腕と鋭い言葉。
与えられたのはそれだけだった。
ごく稀に与えられた賞賛は、およそ子供に向けるものとは思えない、欲得ずくのものだった。
もっともそれに気付いたのも、ずっと後のことだったが。
触れるか触れないかの微かな動き。
指が重なったのだと分かるのに数瞬かかった。
「もう少し、触れてもいいかな?」
許可を問われることなど初めてだった。
その初めての感覚は、私の胸に不思議なあたたかさをもたらした。
END
「そっと」
1/14/2025, 10:59:19 PM