霜月 朔(創作)

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朝日の温もり
 


私は、一人きりでした。
ずっと、ずっと…。
何時戻るとも知れない彼を、
一人で待つ夜は、淋しくて。
布団に包まっても、酷く寒くて。
だから。
私は、貴方の優しさに甘えて、
貴方に温もりを求めました。

貴方は優しい笑顔で、
私の願いに応じてくれたけれど、
貴方の腕に抱かれる度に、
私の寒さは、増すばかりでした。

私と貴方は。
寂しさを埋めるだけの関係だと、
分かっていた筈なのに。
貴方が、私ではない他の人の背を、
とても哀しげな瞳で見つめている事が、
悲しくて、淋しくて。

貴方の腕の中は暖かいのに、
なのに、私の心は酷く寒々しくて。
でも結局、私は。
貴方から離れられないのです。

貴方の隣で目覚める朝は、とても寒くて。
朝日の温もりさえ、冷たく感じて。
私は、未だ微睡む貴方の胸に縋り付き、
何も気付かない振りをして、きつく目を閉じ、
そっと、願い事を呟くのです。

どうか、この許されざる夢から、
早く目覚められますように…と。

6/9/2024, 6:34:25 PM