白糸馨月

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お題『神様だけが知っている』

 おみくじを引いたら、『君はバレてないと思っているけど、神様の目はごまかせない』といったニュアンスのことが書いてあった。
 大吉であることを喜ぶ彼女の横で、俺は背筋が冷えていくのを感じる。
 いや、たかがおみくじだろ? ないないない
 そう思って頭を振ると、彼女が横から覗き込んでくる。

「中吉なんだ」
「あ、あぁ」

 言いながら、俺は木製のあちこち剥げた古いおみくじかけに向かと、そこにおみくじを折りたたんで結び始める。

「持ち帰らないの?」
「うん」

 彼女に話しかけられて、思わず手が震えてしまうのをこらえた。

 実は、彼女がいながら何人かの女の子と遊んでいる。
 彼女はかわいいけど、大学時代から七年ほど付き合ってきて、正直「彼女だけで人生終わるのがつまらない」というのが理由だ。
 彼女に内緒で行った合コンに友達が連れてきた巨乳で背が高い美女と遊んだのを皮切りに俺は何度か相手を変えながら遊んでいる。
 最近彼女から「あかぬけたよね」と言われるようになったが、彼女はぼーっとしてて天然だから気づいてないと思う。
 だが

『神の目はごまかせない』

 その言葉を見たくなくて、俺は結ぶとすぐにおみくじかけからはなれる。
 最近、そこまでベタベタしたがらなかった彼女が急に俺の腕を掴むようになってきたことに俺は都合よく「最近、可愛いことをしてくるな」と思考を塗り替えた。

7/5/2024, 12:16:57 AM