バズ母

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麦わら帽子

夏の水難事故が後を経たない。
幼い子供が川に流されたとニュースで流れる度に、恐怖が蘇る。
僕が小学3年生の時、家族4人で夏、キャンプに出掛けた。妹は小学1年生で初めてのキャンプに朝から大騒ぎだった。
キャンプ場の目の前は川で、川幅はやや広いものの浅く流れも穏やかだった。
僕と麦わら帽子を被った妹は、両親が車から荷物を下ろすのも手伝わず、直ぐに川に向かった。
父は
「川にはまだ入るなよ!子供だけで入ると河童に攫われるぞ!お兄ちゃん、ユキをちゃんと見てろよ!」
と言われ、妹のユキの手を握っていた。すると石と石の間にサワガニが動いた。思わず、ユキの手を離しサワガニを探す。ほんの一瞬のつもりだった。気がつくとユキがいない。麦わら帽子が流れていく。
「お父さん!ユキが〜!」
それからの事は覚えていない。父親がユキに人工呼吸をしている。救急車のサイレン。
ユキは一命を取り留めた。

あれから10年、僕は今でも夏が嫌いで水が怖い。麦わら帽子がゆっくりと流れていく光景を忘れる事ができない。

でも、ユキは水泳部に入りオリンピックを目指している。
ユキ!頑張れ!本当に生きていてくれてありがとう!

8/12/2023, 2:30:16 AM