優越感、劣等感
テストの素点表が配られている。悲喜交々の喧騒の中、赤毛のボブヘアを揺らして、少女はガッツポーズをした。
やった。やってやった。ついにあいつに勝った。入学してから今までの一年半の間変わらなかった総合首位を奪ってやった!
少女はその優越感でいっぱいだった。少し気持ちを落ち着けて、そっと彼女の方に目を向けた。いつも通り涼しげな顔をして表を見ている。癖のあるポニーテールは微動だにしていないように見えた。
ホームルームが終わり、少女は彼女に近づき、勝ち誇ったようにこういった。
「いつもの調子はどうしたの?今までこんなことなかったじゃない。」
彼女は少し考えるそぶりを見せてこう答えた。
「ミチルにつられて漫画読んでたからかも。」
はあ!?と少女の声が教室に響き渡る。
「で、でも、課題は?提出分はやったんでしょうね?」
低い背を精一杯に伸ばして少女は問う。
「ううん。昨日遅れて出した。」
テストは二週間も前だ。なのに昨日提出とは遅れたなんてものじゃない。それどころか寮の同室二人してテスト勉強をサボるとはいい度胸である。
「なんなのよ!私はナナと二人して無言でずっと勉強してたのに!」
納得いかなーい!とまた教室中に声が響く。総合こそ首位を取ったが、科目ごとでは二位のものもあるのだ。それに彼女は一切の復習をしていない。これでは二位も同然だ。少女はドカドカと足音を鳴らして教室を出て行った。
どうしたって天才には届かないのだと、突き放された気分である。少女は泣き出しそうになるのを堪えながら、自室に向かった。
7/13/2023, 1:50:35 PM