夢と現実
「ハッ!」
車窓の景色を見て気づいた、やっぱり寝過ごしてる…
次の停留所で降りなきゃ!と押しボタンを手早く押し、至って冷静なふりをする。ふと斜め後ろを見ると、鞄をゴソゴソ、落ち着かない様子の若いスーツ姿の男性。
この人もやったな。
仲間がいたからといって、バス代が安くなることも、これから歩く歩数が減ることもない。状況は同じなのだが、気分の落ち込みは些か軽減された。
「お疲れさまでした。どうぞお気をつけて」
バスが去ると真っ暗な通りに男女2人きり。そして、ロマンチックな展開が待っているわけもなく、無言で別れて、各々の家に向かい、ただただ歩く。
どこまでが夢だったのだろう?バスの中でのことを思い返すが、いつも利用する停留所を通過した記憶がない。夜風に吹かれ、眠けはすっかり飛んだ。
12/4/2022, 2:49:56 PM