崩壊するまで設定足し算

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▶4.「哀愁を誘う」人間のフリ

3.「鏡の中の自分」 ‪✕‬‪✕‬‪✕‬のモデル
2.「眠りにつく前に」考えること
1.「永遠に」近い時を生きる人形

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‪✕‬‪✕‬‪✕‬は動力を光と熱から得ている。

なので食事の必要がない。
そもそも食物という不純物だらけの物質から
エネルギーを得るのは効率的ではない。


とはいえ人間に紛れて旅をしている関係上、
食事を摂らなければならないこともある。

博士は、そこの所をよく理解していた。

ほどほどの味覚センサー
防水消臭の食物タンク
非常用の排水と焼却システム

これのおかげで、

今夜のように野宿で商隊などと一晩共にすることになっても問題ない。

火を囲む人間たちは、
時に騒ぎながら笑顔で食事を摂っている。

‪✕‬‪✕‬‪✕‬も控えめながら、それに馴染むように振舞っている。


「あの…」

近くで声がしたので顔を上げると、
一人の人間が立っていた。

「これからも…一緒に旅をしませんかっ」

顔を赤らめ上擦った声。恋愛感情を伴った発言の可能性がある。

「あ…」

‪✕‬‪✕‬‪✕‬は、ほんの少し目を見開き言葉を止めた。
少々の間を開けたら目線を伏せ俯く。
そして食事の器をじわじわ握りしめる。

「すみません…誰かと一緒には旅をしたくないんです。まだ…辛くて」

あとは背中を丸めてじっとしておけばいい。
今回も人間の方が哀しみを感じたのか、
謝罪と挨拶をして立ち去っていった。

時々しつこいのもいるが、
周りの人間が止めてくれることも多い。



今の姿を博士が見たら何と言っただろう。

記憶データから答えは見い出せない。
博士の記憶は旅に出る前で終わっている。

11/4/2024, 12:28:02 PM