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「アリスがいなくなって俺の世界から色が消えた」

いつものバーにて、いつものイカレ帽子屋と──言いたいところだが、今はイカレ帽子屋ではなくキチ…失礼。頭のおかしい先生が彼の体に宿っているらしい。
さっきから口を開く度にアリス、アリスと嘆いて煩い。
イカレ帽子屋も大概アリス、アリスと五月蝿いが先生程ではない…と思う。多分。

「ハイハイ、無色ね」
適当な返事を返すと、帽子屋の姿をした先生が大げさな身振りで俺を指さした。

「何だそのやる気の無い返事は!この万年アル中ネズミ!色の無い世界に生きる俺に同情の一つくれたらどうだ!」

アル中ネズミとは、何という悪口を言うのだろうか、このクソ先生様は。
俺は眠りネズミだぞ?
まぁ、アル中は認めるけど。
勝手に役割を押し付けられた俺の身にもなってみやがれってんだ。
まあ、言った所で先生様には何も通じないだろうけど。
同情の余地もねえお人だよ、アンタは。

「無色とは透明を指すこともあるが、無彩色で白黒を指すこともある。白と黒の間には、百鼠の層がある。然るにアンタは、灰色の色彩の中で生きているのさ。良かったじゃねぇか、豊かな百鼠に恵まれて」

「オマエが、百人いるとか地獄の世界じゃねえか」

「実際灰色の数は百じゃあ済まねえんだけどな。そんなに嫌なら、色のある世界に戻ったら如何?」

「アリスが戻ったら俺の世界にも色が戻るのさ」

あー、やっぱり。こうなるよな。
そのせいで、不思議の国がいつまでも閉じられた世界になっているというのに…。
先生様とは、やっぱり話にならない。

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Are you Alice?より
眠りネズミと先生

4/18/2024, 2:04:34 PM