僕の名前はポチ。
数年前に、仲良くしてくれたおじいちゃんが名付けてくれた。
ある日、公園のダンボールの中で暖をとっていたら、見つけてくれたおじいちゃんが、お家に入れてくれてミルクをもらったんだ。
それから毎日、おじいちゃんは僕のところに来て、お家に連れていってくれたの。
僕が花瓶を割っても、ティッシュを出したりしても、ニコニコ笑って片付けてくれるんだ。
だんだん申し訳なくなって、イタズラはすぐにやめて、おじいちゃんが喜ぶような事をしたくなったの。
お花を取ってきたり、お気に入りのおもちゃを貸したり、毛づくろいしたり。
おじいちゃんは 「ありがとう」 って頭を撫でてくれる。
僕はそんな優しいおじいちゃんが大好きだった。
そんなおじいちゃんと一緒にいる中で、一番好きな時間はお散歩の時間。
晴れてる時、太陽の下を歩くのが最高に気持ちいい。
近くの公園で休憩して、また歩いて、そうして一緒に散歩するのが、僕にとって一番幸せだったの。
だって、おじいちゃんも僕も一番笑ってる時間だったから。
だけどある日、おじいちゃんは僕のいる公園に来なくなった。
おじいちゃんの家のそばに行ったけど、黒い服の人達が多いし、白い大きな看板が立ってたけど、字が読めないから分からなくて。
ただ、おじいちゃんに会えなくなったのだとわかった。
その日から一、二年経った。
僕も動けなくなって、公園のダンボールで過ごすようになった。
お腹も空かなくて、一日中ぼんやりする毎日を送っていた。
ポカポカと日向にあたっていると、おじいちゃん散歩していた時を思い出す。
そうそうこのくらいの温かさだった……。
「ポチ」
いつも聞いた声がする。
声の方をむくと、おじいちゃんがいた。
ずっと会えなかったおじいちゃん。
ずっと会いたかったおじいちゃん。
そこには前と変わらない、笑顔があった。
『おじいちゃん!!』
ワンっと鳴いて、おじいちゃんに駆け寄る。
おじいちゃんは優しく抱きとめてくれた。
「よく、頑張ったなぁ……」
うん、僕頑張ったよ。おじいちゃん。
おじいちゃんの手が、ゆっくりと僕を撫でてくれる。
その手はとても温かくて、太陽の匂いがするんだ。
そして僕は、おじいちゃんの腕の中で眠りについた。
#太陽の下で
11/26/2023, 7:35:29 AM