「うわぁ!!海だ!!」
白い砂浜、青い海と空。映えるカモメ達。
私と幼馴染みの優雨(ゆう)は海に来ていた。
「希里(きり)、はしゃぎすぎだよ」
「だってだって、優雨と久しぶりに遊べるんだもん!!」
そう、幼稚園、小学校、中学校までは同じだったのだが、高校は別々の所に通っている。
まぁ、優雨の頭が良すぎて私がその学校の学力に追い付かなかったからなんだけど。
でも離れた優雨と今日は沢山遊べる日。
「思いっきり遊ぶぞー!!!」
私は天に向かって叫んだ。
「あ~楽しかった~!」
時刻はすっかり夕方。太陽が西側に傾いている頃だった。
「希里凄い濡れたね」
「優雨が水かけてきたからじゃーん!」
他愛もない話をする。
そろそろ帰らないと。暗くなる前に。
「希里、夕日見てから帰らない?」
不意に優雨がそう言った。
「?うん、いいよ」
私達はそこら辺にあった流木の上に座って夕日を眺めていた。
「......最近、どう?学校」
「ん?めーっちゃ楽しいよ!友達もいっぱい出来たし!でもテストはすっごい嫌...」
「ふふっ、希里人見知りだったのにそんなに友達出来たんだ。昔は私の後ろによく隠れてたよね」
「いつの話してるの!もう私は一人でも友達出来ます~!...優雨は?」
「私は生徒会長してるよ」
「生徒会長!?凄!!流石優雨だな~頭も良くて、生徒会長って......私と大違い!羨ましいな~」
そんなことないよ、って言ったような気がする。下向いててあんまり聞こえないな。
「優雨?」
「.........私を心配してくれる人っているのかな」
「私は心配するよ?優雨の家族だって、高校の友達だって心配するんじゃない?」
「本当かな」
優雨はすっ、と立ち上がって海に向かって歩き出す。
「優雨?」
私が呼んでも振り返りもしない。
ちゃぱ、ちゃぱと優雨の足首が浸かる所に歩く。
「優雨、危ないよ」
注意しても聞いてくれない。
そうしている内に優雨は、じゃば、じゃばと膝辺りに水が浸かるまで歩いていた。
「優雨」
ごぽ、ごぽ
優雨はどんどん進む。優雨のスカートが水につく。
気づいたら私も水の中に入って、優雨の腕を掴んでいた。
「希里」
どうしたの?何かあった?話聞こうか?って言いたいことは沢山あったのに、
「死なないで」
そう口走っていた。
「......わかった」
そこは、うん、じゃないんだね。
夕日の背にした優雨の顔は、逆光のせいであまり見えなかった。
お題 「逆光」
出演 希里 優雨
1/24/2024, 1:58:48 PM