「どうすればいいの?」
それが彼女の口癖だった。口元に人差し指を当て、こちらを見てくる。
最初のころはそんな様子にあざとさを感じつつも、可愛いと思って、付き合っていた。ただ、月日が流れるにつれ、いろんなことに対して私の意見を求める彼女に辟易してきた。
フードコートのメニューにも、洋服選びでも、家具の取扱説明書でも。
段々この人はもう人に頼らないと生きていけない人なのだなと、忌避するようになっていった。
そうなってしまえば関係は冷え切っていくもので、ついに喫茶店で別れ話になった。
泣きながら私のことを見つめる彼女。そして、
「どうすればいいの?」とつぶやいた。
その時私は、「そういうところだ。自立した精神を持たない人は僕は嫌いだ!」と怒ってしまい、店を出てしまった。
海風に当たりながら、浜辺を歩く。ここも彼女と歩いたな、なんて冷静に思い返した。
すると、思い出が芋づる式に蘇ってきて、いろんな「どうすればいいの?」が出て来る。その時私は気付いたのだ。彼女が私に選択を委ねるのは、それだけ私のことを信頼してくれていた証だと。
そして、ふと、海を見て、彼女へこう問いかけたくなった。
ねぇ、今から、どうすればいいの?
11/21/2023, 3:39:43 PM