「目が覚めるまでに」
私は愛されたかった。
欠点も苦しみも、何もかも全部まとめて愛されたかった。
「無償の愛」なんてものを求めて、ずっと手を伸ばし続けた。
でも、そんなものはどこにもなかった。
だから私は、張り付いた笑顔とキラキラのメッキで自分を飾り付けて、いろんなことを全力で頑張って、「愛される子」になった。家族からも、友達からも、それから男の人からも。
朝早く起きて家族全員分のお弁当を作って、それから好きでもないアイドルの新曲を聴いて、得意じゃない勉強もたくさんして、器用でもないのにメイクも頑張って。
私は「愛されていた」。
家族からはさらに家事を任せてもらえるようになったし、友達からも前より頼られるようになって、それから、私を好きだと言ってくれる男の人も現れて。
私はとっても嬉しかった。
でもとっても疲れた。
だからある日から何にも出来なくなってしまった。
それでもみんな、愛してくれると思っていた。
でもそんなことはなかった。
みんな私を白い目で見る。「何それ?」って言って茶化して。
こんなに苦しいのに。
そっか。みんな私じゃなくて、
「頑張ってるわたし」が好きだったんだね。
なんで今まで気づかなかったんだろう。こんな簡単なことに。
今度久しぶりに会う恋人も、きっとこんな私のことを好いてくれない。あなたにまでみんなとおんなじような、あんな目で見られたらもう耐えられないよ。
だから。
この魔法が解けるまでに。
あなたの目が覚めるまでに。
この恋も終わらせないと。
さよならを言わないと。
……こんな私でごめんね。
8/4/2024, 8:43:12 AM