そこは、薄暗い部屋だった。
かちかちと照明が瞬きをし、灰色の鉄で作られた壁と床の上には、様々な書類が散らばっている。
「おい、本当にここなのか?」
黒髪に少しばかりの白髪を混ぜた、40代程の男性が、隣にいる女性に話しかけた。
「そのはずですけど…ニキ、ほんとに探してます?」
「こちとら警察だぞなめんな」
「うーん、他の部屋は調べ尽くしましたしね。」
女性はそう言いながら、ため息をつく。
ベージュの髪を肩下まで伸ばし、カーキのコートを羽織っている。
20代ほどの、少し大人び、かつ可愛げのある顔だった。
その会話から数分後。会話のない空気を切り捨てたのは
「あ!あった!」
という、女性の言葉だった。
やっとか、と男性も側に駆け寄り、女性が手にした一枚の紙を見つめる。
それは、手書きの文字がびっしりと書かれた、手記のようなものだった。
イラストや写真がはいる余地などなく、無機質に一番上には『生物兵器 最終調整』とタイトルが書かれていた。
「おいこれ…」
「まぁ、全部読んでからにしましょうよ。」
二人は文字を読むスピードを合わせ、読み進めた。
内容は、人をゾンビ化させてしまうウイルスや、規制主を洗脳してしまう虫、人骨を貪る猿の開発など。
様々な人類を危機に貶める方法への、アプローチが記載されていた。
しかし、どれも材料や金銭、実験段階で失敗が連続したことにより、開発は中止となっていた。
二人は、安堵のため息をついた。
更に、二人は文字を読み進めた。
その文字の後に続いた、"しかし"の文字が気になったからだ。
『しかし、ついに、やっと見つけた。転機が訪れた。
彼と出会ってから、このアプローチが可能になった。
嬉しくて死んでしまいそうだ。これで、あの憎き警察どもを滅ぼせる。
実行日は1/26。さぁ、無様に人骨を晒しやがれ。』
二人が、最悪なため息をついた。
「やばいですね。」
「あぁ、明日だ。」
「流石に手伝いますよ。この感じ、相手も私のような存在を味方につけているだろうし。」
「ふーー対価はなんだ?」
ギロリと、男性が睨む。
「えへへ。ちょっとばかし北に用事がありまして、警部の口利きで、お宿を取って欲しいんですよ〜」
警部と呼ばれた男性は、長いため息をつく。
「わかった…いいぞ」
安心と不安の空気が、部屋の中で混じり合った。
お題『安心と不安』×『生物兵器』
1/25/2026, 12:40:48 PM